#46 間違った学習法:漢字

「人類の栄光を願い!!これから死にゆくせめてもの間に!!
           彼の戦術価値を説きます!!」(『進撃の巨人』諫山創 )

漢字学習のためのInstagramを始めました。その名も"Kanstagram" ( ID: kan_stagram)

そのきっかけは、Threadsで同じ漢字を繰り返しノートに書く学習者を見たから。
その投稿は動画で、同じ漢字を10回、20回と書いている様子が映っていた。
私からすると、漢字を覚える作業と言うより、もう手と腕の筋トレ?と感じてしまう。
まあ、何かを集中して無心になるのは、瞑想に似たような効果はあると思うが…。

教師の役割の一つに、学習者の非効率的な学習方法を正すというのがあると思う。
特に、漢字学習においては、学習法すなわち覚え方を指導する必要があるだろう。
にも関わらず、日本語学校はもちろん、漢字の教科書さえも「教える」傾向が強い。
漢字は学習者自身で「覚える」ものであり、「教わる」ものではない、と私は思う。
だからこそ、教師は「どうやって覚えるか」という学習法を提示する必要がある。
そこで、「漢字学習法」について、私の考えを話してみたい。

まず、習得すべき漢字というのは、大きく3つに分類される。
・意味がわかればいいもの
・意味がわかって読めるもの
・意味がわかって読めるし、書けるもの
そして、学習すべき漢字がどこに分類されるかによって、学習法も変わる。
当然、「意味がわかって読めるし、書ける」に求められるのは、基礎的な漢字だけだ。
だから「書ける」は何度も書いて練習、「意味がわかる」は数回書いてみるだけでOK。

ただ、何回も書いて練習するという際には、注意すべきことがある。
まず、一回は、「あえて」普段よりもやや大きいマス目で、書いてみるということである。
これは、マスの大きさに関係なく、字形のバランスを保てるようにするためである。
線の書き始めと終わりがどう収まるかをチェックしつつ、全体を整える必要があるからだ。

それ以降は、一般的な大きさで数回書いてみて、そこで一旦終了。続けて書かないこと。
その理由は、その場で覚えた漢字をただ繰り返しているだけの作業になるからだ。
続きは8時間程度おいた後、少し忘れたぐらいのタイミングでやるのがよい。
これは「キリが悪いところで「あえて」やめる学習法」で、定着を促す学習法である。
そうすることで、次回へのモチベーションを保ち、定着が強まる効果が期待できる。

これは、よく知られている学習法の一つだが、このような学習法を取り入れている
市販の漢字の教科書は、たぶん、ほとんどないし、日本語学校でもやってはいないだろう。

「市販の教科書」と言えば、わたしが一番拒否反応を覚えるのは、「音訓読み」だ。
ほとんど全ての教科書では、ある一つの漢字を紹介し、その音訓読みを載せている。
すると、どういうことが学習者に起きるか、想像してみてほしい。
真面目な学習者であるほど、漢字を覚える際にはその音訓を暗記しようとしてしまう。
これはまるで、辞書を丸暗記しようとしているのと同じことである。

これは、実に不幸をもたらす学習法であり、多くの学習者がやってしまうものである。
日本人であっても「その音読みは知っているが訓読みは知らない」は普通にあるだろう。
にもかかわらず、ほとんど全ての教科書が、この不幸を学習者にもたらしている。

漢字学習の大前提は、学習しようとしているその言葉をすでに知っていることだ。
その上で、その言葉にどんな漢字が当てられているのかを学習すべきなのである。
例えば、「おおきい」が既習なら、「大きい」をやればよいのであって、
「大学」の「ダイ」という音読みは、未習であるなら、紹介すべきではないと思う。
ここでの目的は、「大」という漢字を覚えることなのだから。

この大前提が守られていないから、レベルに合わない難しい単語を紹介することになる。
もちろん、漢字→語彙という方向で学ぶこともあるだろうが、それは上級での話しだ。
そういった、レベルに合わせた学習法という面も注意を払うべき点であると思うが、
残念ながら、多くの教科書を見ても、その点に配慮がなされているとは思えない。

例えば、初級の漢字教科書で、「私」という漢字が紹介されていたとする。
「「わたし」は「私」と書く」それで十分なはずなのに、なぜか「私立」まで紹介する。
ここにはおそらく「教えたい」という教師中心の考え方があるのではないだろうか。
「学習者中心」という考え方に今一度立ち返って、「何を教えるか」ではなく、
「どうすれば覚えられるか」という視点で、漢字学習を考える必要があるだろう。

なお、「どうすれば覚えられるか」という点については、次の投稿で書こうと思う。
そこには、漢字の提出順序に関して、何を重視して提出するかという大きな問題がある。

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