#41 図表を使って教えてはダメ

「なあ、今、司令が何言ってんのかわかんなかったが、
それは俺がバカだからじゃねえよな?」(『進撃の巨人』諫山創 )

フジテレビの紙兎ロペを見ていて、「やっぱりそうなるよね」と思ったこと。

主人公のロペと、その先輩であるアキラが会話をしている。
先輩はロペに、下図で「おしるこ」と「ぜんざい」が、関東と関西で違うという説明をする。


先輩が図表を見せてひとしきり説明したあと表を隠し、ロペの理解度をクイズで試す。

先輩「関東で汁気があってつぶあんは?」 ロペ「おしるこ」
先輩「関西で汁気があってこしあんは?」 ロペ「えーと、おしるこ」
先輩「関西で汁気がなくてこしあんは?」 ロペ「えーと、ええーと、え?」

案の定、ロペは思考が追いつかず、答えがしどろもどろになってしまった。

未知のことを図表で説明してもらっても、大抵は、その場でただわかったような気になるだけだ。
図表というものは、既にその本質を理解している人が見てはじめてわかるという代物である。

そして、こんな失敗を日本語教師養成講座の受講生が最初の模擬授業でやらかしてしまう。

たとえば、「もう食べた」「まだ食べていない」を時間軸で示したり、
「すると」「すれば」「したら」の違いを表にまとめて教えたり、という失敗だ。
このような説明は、一見すると理路整然とまとまっていてわかりやすいように思えるが、
実際は、そんな説明は学生の習熟に全くと言っていいほど効果がないか、むしろ逆効果となる。

このことをどれだけ受け入れられるかが、実は日本語教師に必要な大きな素質と言ってもいい。
養成講座時代、教官に何度指摘されても、「え?なんでしてはいけないの?」という同期がいた。
こういう人は、自分の固定観念を一旦保留して、受け入れてみることが、おそらくできない人。
そして、とてもではないが、自分の母語である日本語を外国語として見ることができない人。

          おしるこ

言葉というものは、何を置いてもまず、そこにモノやコトがある。
そして、ここでは、モノに「おしるこ」という音が紐づいている。
それに加え、その音は「おしるこ」という文字を持たされている。

だから、絵を見せて、言って聞かせて、文字を見せることで、確実に教えられるのだ。
具体的なモノや眼に見える動作などを入門や初級で学んでおけば、
抽象的なコトでも、場面を与えつつ、既習の言葉で説明すれば教えられるのだ。

ただ、私も偉そうにこう述べてはいるが、ちょっと油断するとやらかしてしまう。
例えば、文法を説明するときに、初めに、以下のように提示することはないだろうか。

  A  は、  B  によって、  C  

もちろん、やり方次第では完全にダメとは言えないかもしれないが、
日本語の文法の教科書でも、このようなやり方で文型を提示しているものだから、
ベテランの先生でも、学習項目の冒頭の説明から上記のような型を提示することが多い。
(私の所属していた学校が提供してくれていた教材のスライドもこのようになっている)
上のようなことをしなくても、「「性格は人によって違う」他には?」と問えばいいだけ。

文字カードを用意しておいて、WBの板書にカードを貼っては入れ替えて教える方法もあるが、
私はこれにも違和感を覚える。「パズルゲーム」感覚と現実の言語運用にギャップがあるから。
もちろん、入門段階で楽しませたいというのはわかるが、ほどほどにしておくべきだと思う。

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