#34 タイ語は激ムズ!

「うーん…同じ言語のはずなんだが…怯えてそれどころじゃないのか…」(『進撃の巨人』諫山創 )

日本語教師になって最初に渡った国はタイだった。
日本の地方都市の日本語学校で教え始めて5年が経ったころ、「海外へ」という気持ちになった。
それで、サイトの求人情報で条件に合うところに履歴書をばら撒いた結果、行き先が決まった。

そんな感じで決めた国だから、当然好きとか嫌いとかはない。まずは、下調べから。
タイは、飛行機で日本から6、7時間、東南アジアの国。時差は2時間。遠くないイメージ。
熱帯の国で、季節は暑季、雨季、乾季とのこと。夏服だけで過ごせそう(←これは間違い)。
人口は、8千万人くらいで、民族はほぼタイ民族。植民地支配を受けたことがない国。
言語は、昔からタイ語だけ。ただ、隣接しているラオス語とは通じる特徴があるようだ。
宗教は仏教だが日本とは違う仏教。だけど、宗教より大切なことは、タイが王国だということ。
王国ゆえ、王様の悪口を言ったりすると不敬罪、国歌が流れたときは起立が求められる。
通貨はバーツ。月給は2万バーツで、当時のレートでは6万円。けれど、それで十分生活できる。

タイは当時から海外旅行先として日本では人気があったので、ガイドブックは多かった。
タイ料理、仏教文化遺産、南国リゾートなど、見どころや楽しみが多い国で今も人気がある。
だけど、私はどれも興味がなかったが、タイ文字とタイ語の響きはとても魅力的だった。

…が…まず文字の体系がわからなすぎる!この文字も"S"、その文字の"S"、あれも"S"。???
こんなのがいくつもある。そして、文字の組み合わせで声調が変わるって、何で???
そもそも、声調とは???加えて、有気音と無気音の区別!!!無理ゲーじゃない?
だけど、当時の私は「海外で日本語教師!」という無敵モードで、それも楽しかった。
…が…やはり、文字の習得を頑張りすぎるといつまで経っても学習が進まないので後回し。
とりあえずはローマ字の発音記号をたよりに「聞ける・話せる」を優先した。

今思うと、これはとてもいい判断だった。「言語学習で優先すべきは音」という知見に
確信を持つことができたことは、語学教師に必要不可欠な大きな財産だったと感じる。
私はモノマネが得意な人間である。これは語学習得のセンスの有無を示すものである。
私は少し外国語を勉強しただけで、その国のネイティブに発音を褒められることがよくある。
この才能を活かして、旅行で必要なタイ語フレーズを渡航前に割と話せるようになっていた。

…つもりだった。けれど、タイに着いて話してみても全く通じない。笑えるほど通じない。
もちろん、相手が話すタイ語も当然、何を言っているのかわからない。
もう、ホテルなど英語が通じる場所でしか意思疎通ができないと割り切るしかなかった。

赴任先につくと、日本語が話せる同僚がお世話をしてくれるので、生活のスタートは安心。
それからは、仕事は日本語で大丈夫なので、日々の生活がタイ語でいけるように勉強。
1年が過ぎても、レストランなどでなら通じるという程度にしか発音が良くならなかった。

だけど、1年過ぎて語彙が増えると、トップダウンで文字が読めるようになった。
例えば、パパイヤサラダの「ソムタム」を知っていれば、ส้มตำ の読みが推測できる。
そういう、トップダウン演繹手法で文字の読む方を発見し、ある程度読めるようになって、
本格的に文字のルールを覚える練習をすれば、変な癖がつくことなく文字読み能力がつく。
文字が身につくと、発音の定着が進む。文字で頭の中にある単語の発音を固定していける。

それでもやはり、完全に通じるような発音はなかなか身につかない。あとで知ったが、
現地タイ人と結婚してどっぷりタイに浸かった日本人でも5年くらいかかると聞いた。
それほどに、タイ語の発音を身につけるのは難しい。

けれど、タイ語の響きって美しいんだよなあ。みんな甲高い声でタイ語を話す。
これは、口の中の「かきくけこ」を発音する位置に常に舌の高い部分を置いている証拠。
カラスの鳴き声「カー、カー」の音マネを常に意識して話せば、甲高い声になる。
微笑みの国の美しい女性の、高らかに響く「サワッディーカー」の挨拶は、とても良い!



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